最近、日本と中国の間において政治は冷たく、経済は熱い状態が続いています。特に外交問題は大きな問題になっているようです。中国では靖国・教科書・尖閣諸島を争点とした反日デモで、大使館や日系企業に被害が出ているという報道が聞こえてきます。今のところ、日本国内は冷静さを保っていると思うのですが、私が憂慮しているのは、この日本側の静観も将来は続かない可能性があるのではないか、ということです。
私が考える、近い将来の問題点は二つあります。
1.
日本の仕事が中国に取られることによる失業率上昇から溜まる不満
2.
中国のエネルギー事情逼迫による尖閣諸島ガス田の強制接収、もしくは非常に日本に不利な形での契約
まず、中国に仕事が取られる点を予想します。
仕事をとられるという点で見ると、国外・国内の二つのサイドで話を進めなくてはなりません。つまり、「日本国内で中国からの人材に仕事が取られる」ことと「中国へ仕事がシフトする」の両方です。これによる失業問題で、日本国内での中国に対する不満は高くなると考えられます。
日本の少子化等を考えると、海外からの単純労働者受け入れは避けられないでしょう。本当は必要ないかもしれませんが、国内においてさらに安い労働者を求める風潮からいって、現状よりも基準は緩むと思います。
その結果、例えば日本人が嫌がる仕事だけではなく、現段階でアルバイトが必要な職場すべてにおいて外国人労働者は活用されるでしょう。ITの更なる進化でアルバイト自体の必要性も低下するでしょうし、アルバイトが日本人である必要性(言語・文化問題)も低下するはずです。
利益拡大を第一とする風潮から言っても、賃金の高い日本人をわざわざ雇う必要もなくなってくるでしょう。すでに外国人の店員は珍しい存在ではありません。また、アルバイトの単価自体も下がるので、アルバイトだけで生活する人も苦しくなるかもしれません。もっと悪いことに、出稼ぎ労働者は故国へ賃金を送金する為、日本の外貨が流出する上に内需拡大にも貢献しない、というおまけまでついてきます。
また、高度な技術者も中国から来るという可能性も高いわけです。すでにインドからIT技術者が来日しているように、ITに限らず、広範囲な第三次産業で中国から人を受け入れることになりそうです。よって、「日本人の職が奪われる」ため、ドイツの抱えるトルコ人問題と類似した状況の上に、高付加価値労働まで追加された文化・経済摩擦が増加する危険性があると思います。
二つ目に中国へと職が流出するということですが、主にコールセンターなどの業務が中国へと移転するでしょう。アメリカの場合はインドへとアウトソーシング(外部委託)することが増えているそうですが、そのうち同じことが日本でも起きるでしょう。コールセンターへ電話すると、中国へとIP電話で飛ばされて、中国人スタッフと会話することになるのでしょう。
また、企業の間接部門は、すべて中国へと移転すると考えられます。ITの進化は、たとえば翻訳ソフトの技術向上などで、高度な日本語力が不要な状況を作り出すでしょう。となると将来、日本語という非関税障壁も低くなることはあっても、高くなる事はありません。その上に、IT化によって間接部門の処理に関わる人員も削減されてしまうでしょう。よって、新しい産業が雇用を創出しなければ、ますます失業率は上がります。
こういった問題を避けるには国内での外国人労働者を規制するか、あらたな産業へ人材をシフトさせ、フィンランドのように新産業を興す、といった政策が必要なのですが、おそらく今の状況では、そのようなことは政治家にはミッション・インポッシブルでしょう。そんな能力がある人間は、今のところ見当たりません。
むしろ、政治家には所得二極化の不満を国内の外国人労働者に向かわせることになる危険が大きいように思います(これは、反日デモが中国国内の不満のハケ口になっている、というニュースの分析と類似した状況です)。失業問題と安易なナショナリズム、小学生の低学力化(リテラシー不足)が結びついたとき、フランスの極右政党の党首が大統領の決選投票に残ったような状況が、日本でも再現されるのではないか、と確信しています。
こうなると、もはや日本側も静観できる状態にはならないでしょう。また高度な情報化とブログ文化によって、あまり練られていない、短絡的な考え方が世論を席巻する可能性もあると思います。そうすると、もはや「良識派」はお払い箱、政治家は次回の選挙のための人気取りとして世論に迎合し、強硬になっていくといったことも懸念されるでしょう。
また、これらの抗議行動が一種の「イベント」として機能する可能性もあります。イギリスのフーリガンのように、何かにつけてサッカーを口実に暴れまわったりすることが常態化するのです。この口実に「抗議行動」が使われるのです。もしくは、抗議行動に参加すること=日本人としてのアイデンティティーを再確認できる、といったイベント性も考えられます。こういったことが、抗議行動を「ファッション」にし、強い不満を持つ層以外にも、抗議行為が広がってしまうことで、ますます問題が泥沼化する、といった状況も考えられます。
これらの問題が自然解決するのは、中国が一人当たりのGDPで日本を追い抜いたときですが、それは日本がアジアの重要な地位から滑り落ちたことを意味しますので、あまり好ましいことではありません。もちろん、仮に実現するとしても、中国の内陸部にある巨大な貧困層の圧力から言って、そのような状況は「かなり長い間」実現はしないと考えられます。これらの問題には遅かれ早かれ、もっと深刻な事態になる前に対処すべき問題だと思うのです。
もう一つは次週に続く